大、20才の君へ

 

20才を祝う会

 

大、20歳の誕生日おめでとう。

君がボクシングを始めたのは17歳。高校2年生の3学期、2月のことでした。それから3年の歳月が過ぎようとしています。ボクシングというスポーツを全く経験したことがなかった君の生活は、今ではボクシングを中心として廻っています。君は18歳の春に高校を卒業すると同時にボクシングジムの合宿所に入寮しました。その結果、精神的な面でも君は家からだいぶ遠ざかりました。

 君は昨年(2008年)の東日本新人王トーナメント戦に出場しました。新人王戦はプロボクサーとしてやっていけるかどうかが心身ともに試される場です。いろいろなタイプの新人がリングに上がっていきます。野獣のように相手選手に飛びかかっていく闘争心丸出しの選手もいる傍ら、なんでこの選手は新人王戦にエントリーしたのだろうかと首を傾げたくなる選手も見受けます。

 君が後楽園ホールのリングに4連勝という戦績を引きさげてスーパーフェザー級準々決勝戦に登場したのは8月5日でした。父さんはリングサイドで君が青コーナーから入場してきたのを観たとき、いつもと違う君の姿が気になりました。前日、後楽園ホールで会った時と全く異なり、君の顔色は悪く瞳は視点が定まらず宙に浮いているように感じたのです。その心配は現実のものとして現れました。アウトボクサーとしての君の足捌きが1回は軽快に動いていましたが2回からは全く止まったのです。君のこれまでの4試合はいずれもボディーコンタクトの激しい試合を経験しておらず比較的に綺麗な試合運びでした。それが変わって対戦相手と打ち合い、激しく身体がぶつかる場面も度々出てきました。やられるな、と思いました。残念ながら予想した結果となり、君にとっては初めての敗戦という苦い経験となりました。後日、君に会った時に尋ねました。「どうして2ラウンドからアウトボクシングをやめたのか?」に君は答えました。「あの時、自分から打ち合いに行ったんだ。その結果、パワーで押された」「どうして?」の問いに「1ラウンドを取られたと思ったから・・・」との答えであった。実際には1ラウンドは大が取ったのだが、大は相手のパワーで押されていると思ったのだろう。戦っている選手自身が自分自身を客観的に判断することの難しさを感じました。


 あの試合は、確かに有効打は君のほうが相手選手より多かったのは事実です。しかし君は手数が少なすぎました。それは試合運びの面で守勢に立ち、相手に押されていたからです。これがジャッジの印象を悪くし君は負けたのです。勝負ですからどちらかが勝ち、どちらかが負けるのは仕方のないことですが、この敗戦から君が何を学ぶのかが一番重要なことです。敗戦から学べないのならば、その後の成長は望めません。どの選手も一度は負けます。天才的な勝負勘を持ちアマチュア、プロを通して生涯無敗で選手生活を引退した偉大なチャンピオンであったリカルド・ロペス選手のような人が極まれにいますが、その選手が特殊なのであってめったにいません。

君は初の敗戦から何を学んだのだろうか?
・ハングリー精神だろうか?
・積極果敢に打って出る攻撃性だろうか?

・接近戦の重要性だろうか?
・勝負に勝つための戦い方だろうか?
・戦いながら客観的に自己自身の現状を判断することだろうか?
まだまだあるかもしれません。

 敗北によって自分自身の欠点が明らかになり、それを克服するためにより一層練習に励むことです。10月13日、君と一緒に後楽園ホールで「東洋太平洋スーパーミドル級タイトルマッチ」を観戦しました。暫定チャンピオンの清田祐三選手が見事なKO勝利を収め、正規チャンピオンとしての認定証を受け取り、チャンピオンベルトを腰に巻きました。両手を広げ観客に応えている姿をリングサイドから真剣に見上げている君に「近い将来、君があのリングに立ってベルトを巻き観客に応えている清田選手の姿に自分をダブらせて考えたことがあるか?」と問うと、間髪をいれず「勿論。任せておけ!」と力強い答えが返ってきました。その答えを画餅にすることなく自分の能力を信じ前進して欲しいと思う。

 

君は今年(2009年)の東日本新人王戦に再度エントリーすると言っています。新人王戦は名誉と栄光を掴み取るための登竜門です。父さんも昨年同様に今年も足げく後楽園ホールに出かけることになるでしょう。そして年末には全日本新人王に輝けるよう頑張ってください。期待して応援します。

 

                                               2009年2月7日

 

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