大、14才の君へ
大、14才の誕生日おめでとう。
君はよく頑張っていると父さんは思います。
月曜日と木曜日の学習塾。
火曜日と金曜日と日曜日の空手。
それに毎日のサッカーの部活です。
部活は月曜日〜金曜日までの朝練習に午後練習です。
土曜日、日曜日は半日練習に出かけていきます。
休みが入るのは1週間で水曜日と土曜日の夜だけで、月、火と木、金、日曜日は家に帰ってくるのは22時過ぎです。
君が学校から帰るなり再度出かけるまでの間、バタン、グー、と寝入ってしまうのを時々見かけますが、身体がくたびれちゃわないだろうかと心配します。
でも君は、「好きだから」と言いつつ毎日毎日の生活を続けています。
父さんは見守り続けるだけです。
昨秋、幕張支部の演武会試合で久しぶりに君の空手を見ました。随分、腰が据わり、形が決まっていました。スピードはいま一つでしたが君の体形はポッチャリとした小学生体形からスラリとした中学生体形へと変化してきています。身長も急速に伸びています。
試合は形試合も組み手試合も2回戦での敗退でしたが随分成長したなあと思いました。
試合を終えた夜の食事の時、感想を聞いてみると君は、「組み手試合の時は、2試合目は早く試合をしたくてたまらなかった。少しも怖くなかった」と言う。
組み手試合は殴り合いですから多々、腰が引けることがあり、相手の動きを見ている君の戦い振りを見ていると、もどかしさが出てくることが多いのですが、君はむやみやたらに攻撃を仕掛けても無駄だという。相手を良く見て攻撃するという。
君はよく試合に出かけていきます。
全国大会、関東大会、県大会、地区大会、支部大会、さまざまな大会に参加し実践の中から身体で体得していくようです。昨年の全国大会は
「父さん、全国大会に行きたいのだけれど行っていいかなあ?」
「うん。行きたければどこへでも行ってかまわない。金は出してやるから」
「ありがとう。ぼく、全国大会に行きたいんだ。よかった」
宮崎までの旅費が高いことを心配し、控えめに全国大会参加について聞く君との会話でした。親が子どもにしてやれることなんて少ないものです。子どもがやりたいことの出来る環境を作ってやることも親の役目のひとつだと父さんは思っています。
君はよく怪我をします。この1年間を見ても3回怪我をしました。左足首骨折、右足親指骨折、右足関節炎です。その度に松葉杖のお世話になっています。
君は質問してきます。
「僕って、どうしてこんなに怪我が多いのだろう?」
「怪我か? 運だよ、運。しょうがないんだよ。怪我は試練だと思って、焦らずに一歩一歩、地道にやっていくしかないね」
「ふ〜ん。でも、怪我が治ってせっかくみんなと同じように走れるようになるとまた怪我をしちゃうんだから。その繰り返しなんだもの」
怪我はスポーツ選手にとって非常にマイナスになりますが、君は走れなくてもチームメイトの練習を見に行きます。それでいいんだよ。
1週間のハードスケジュールが君の身体に疲れを蓄積させているのかもしれませんが、好きでやっていることが疲れを感じさせていないのかもしれません。また、若い身体は鍛えれば鍛えるほど頑丈な身体を作っていく時期だと思います。
ディズニィーランドでのスナップ
1月16日でした。父さんが会社から帰ってきたばかりの20時頃に中学校でPTA会長をやっている児玉さんから「来年度のPTA会長をやってください」と電話が入りました。父さんは、「息子は来年度は3年生になりますからPTA会長をやるにしても1年間ですし、1年後にまた会長を頼まなければならないことを考えるならば1年生の親の方に会長にお願いしたほうがいいと思うのですが1年生の親の方で候補者は見当たらないのですか?」と問いかけました。
児玉さんは「いろいろ役員で話し合ってはいるのですがなかなか見つからないのです。なんとかお願いできませんか?」というので、父さんは年休も少ないし客観的に見ても結構公私共に忙しい身なので、瞬間、迷いましたが「わかりました」と引き受けました。
それを君に話すと「うわー、最低。また、学校でいろいろ言われちゃうよ。最悪だよ」と言いました。君はとても相手の気持ちをおもんじ相手の心に気遣います。優しいところがあるのですが、父さんはなんでそこまでしなければならないの、もっとスッキリ切っちゃえと思うのですが、君はいろいろ考えて分切れないところが見えます。父さんも君と同じ中学生の頃はとても静かな引っ込み思案な子どもでした。君のように周りの友達に気を遣う子どもだったのかもしれません。しかし、それを高校生から青年期にかけて人前で話したりするのは平気になるように意識的に変えていったのです。いろいろな経験、体験を積んでいった結果がより積極的なポジティブな人間に変化していったのかもしれません。
父さんは決してPTA会長になりたいなどと自分から思ったことはありません。しかし、父親は仕事が忙しいなどと言い訳をしながら母親に子どものことを任せっきりにした結果が100万人を越すといわれる「引きこもり」を産んでしまった悲劇は取り返しがつかないと思うのです。小学校入学時のはちきれんばかりの笑顔の子どもが10数年で全く変わってしまうのです。「引きこもり」だけでなく「万引き」「飲酒」「喫煙」「援助交際という名前の売春」等々、君たちの周りにはさまざまな問題が山積みしています。そのような問題に対して、父さんは少なくとも親の責任としてきちんと子どもと向き合って生きていきたいと思っています。君にとっては迷惑かもしれないけれど、頼まれたら背筋を伸ばしてそれに応えて行くのが親として、また大人としての役目だと思って小学校に続いて中学校でもPTA会長を引き受けたのです。
ではこれで父さんからの14通目の手紙を終わりにします。
2003、2、7、記