餌を探すアカハラ
12月17日 快晴
花島公園まで花見川沿いの往復10kmのバードウォッチングに出かけた。空は雲ひとつなく晴れ上がっていたが、日本列島に襲来した寒波によって、日本海側では一晩で60cmの積雪が見込まれる、と昨日の天気予報は伝えていた。幕張でも明け方にかけて台風並みの強風が吹き荒れていたので、その名残の風は強く空気が非常に冷たかった。両手に手袋はしているものの、指先がジンジン痺れるような寒さだった。それでも花見川の土手の日当たりの良い場所では、早くもスイセンが咲き出した。白いスイセンの清楚な花が微かに揺れていた。黄色く色づいていたイチョウの葉は、すっかり落ちて丸坊主になってしまった。
ハヤブサの仲間のチョウゲンボウに出会った
田んぼ道を歩いていると、焦げ茶色の身体と流線形の翼を持った鳥が飛んできて、50mほど先のコンテナの上に舞い降りた。あの鳥は何だ?初めて見る鳥だった。カメラを向けると、直ぐに東の方に飛び去った。タカの仲間だと分かったが、ハトよりも大きく素早い飛び方は今まで見たことがない鳥だった。どこに飛び去ったのだろうと双眼鏡で探していると、150mほど離れた農機具小屋の屋根に留まっていたのである。あぜ道をゆっくり歩いて近づくと、今度も50mほどの距離で西の方に飛び去ってしまった。帰宅してから画像を確認すると、ハヤブサの仲間のチョウゲンボウだった。
左脚の指が切断されたイソシギ
1羽のイソシギが尾羽を上下にちょんちょん振りながら堤防の上で餌を探していた。左脚を見ると全ての指が切断されていた。おそらく釣り糸がイソシギの足に絡まり、取れなくなって徐々に切断されたものと思われる。釣り人は納竿時に釣り糸を棄てる人が多い。その結果、野鳥の脚に糸が絡まり、徐々に締め付けて、最後に切断されるという事例が多いのである。しかしイソシギは指を失っても元気に餌を探して歩きまわっていたのである。イソシギの身体の色は灰色をしているために地味だが、薄い白色の過眼線が入り、スタイルのいい鳥だと思う。
食事中のカンムリカイツブリ
白い首を伸ばし、黒い帽子を被ったスタイリッシュのカンムリカイツブリが悠々と泳いでいるのが目に留まった。嘴を半開きにしたままで、時には上を向き、何かを飲み込んでいるような仕草をしていた。大きな獲物を捕らえたようだが、獲物が大きすぎて、なかなか飲み込めなくて苦労しているようだった。獲物を捕らえたのはいいのだが、その後処理に困っている鳥には度々出会うが、今回もそのひとコマのようだった。獲物は平たくて背びれが目立ったので、外来魚のブルーギルのようだった。
食事中のオオバン
オオバンが群れて陸に上がり、餌となる葉っぱを食べる姿が見られるようになった。オオバンの鳴き声はケッケッというような鋭い鳴き方をする。時たま激しい喧嘩をしている場面を見ることがあるが、比較的おとなしい野鳥だ。今の時季は青物の葉っぱなどが少ないため、川の近くの畑などに上がって冬野菜の葉などを食べている光景も見られる。野鳥は四六時中食べ物を探しているが、食料は死活問題に直結しているのだ。
食事中のオオバン(左)とバン(右)
バンとオオバンが水草を食べていた。オオバンに比べて一回り小さいバンは神経質だ。オオバンはカメラを向けても逃げるようなことはないが、バンはカメラを向けると敏感に反応して遠くに去っていく傾向がある。
これまでに出会った野鳥は、ヒヨドリ、モズ、キジバト、ハシボソガラス、チョウゲンボウ、オオバン、コガモ、ハクセキレイ、カワウ、チュウサギ、スズメ、カワラバト、バン、カンムリカイツブリ、アオジの15種類だった。
食事中のシジュウカラ
神場公園に寄ってみると、シジュウカラの群れが地上に降りて、盛んに餌を探していた。数は10羽ぐらいいただろうか。芝生広場では10数人のお年寄りの団体が円陣を組み、各自でビニールシートを広げ、リーダーの掛け声のもとに寝ころびながら思いっきり背筋を伸ばし、「素晴らしい」「最高だ」と言いながら空を見上げていた。しばらくすると両手にトレッキングポールを持って歩き出した。いわゆるノルディックタイプのウォーキンググループのようだった。先日、テレビ番組でこの近くのノルディックウォーキンググループを紹介していたので、そのグループかもしれないと思った。
食事中のカワラヒワ
15mほどの高さの枝を移動しながら、盛んに実をついばんでいる5、6羽の鳥がいた。双眼鏡で確認すると、カワラヒワの群れがやってきたのだった。何の実を食べているのか、私には分からなかった。
餌を探すエナガ
エナガとメジロとコゲラの混成群がやってきた。しきりに枝から枝へと移りながら餌を探していた。エナガもメジロもコゲラも野鳥としては、比較的に小さな身体をしている。絶えず小さな鳴き声で、お互いに合図をしながら動いていた。野鳥は鳴き声の種類で会話をしているということが最近わかってきている。猛禽類やヘビ類に対する危険信号を発する鳴き声などは、種類が違っていても通じるのである。
シロハラも渡ってきた
暗い林の中からクックックッという連続したくぐもった鳴き声が届いた。アカハラかシロハラがいるに違いないと思って声のする方に向かうと、はたして木の枝で鳴いていたのはシロハラだった。アカハラもシロハラもツグミの仲間で、ともに冬鳥として日本に渡ってくる。
餌を探すコゲラとメジロ
ヨークシャーテリアと散歩に出ていたおばあさんが、私が大きな望遠レンズを持っていたので、「鳥の飛ぶスピードは早いのが多いですね」、と声をかけてきた。私は、「鳥の種類にもよりますが、ツバメやタカは早いですが、スズメやカラスは遅いですね。色々ですよ」と答えながら、しばらく立ち話をした。おばあさんはしきりに「私は年寄なので、風が冷たい、風が冷たい」と連呼していた。連れているヨークシャーテリアは座敷犬で、もこもこのフリースを着せられていた。両眼が少し潤んでいたのは寒さのためだろう。座敷犬は暖房でぬくぬくした生活をしているため、外に出ると寒さがこたえるのではないだろうか。犬を甘やかしすぎだと思う。
色づいたカエデも終わりが近づいている
自宅を9時に出発し、花島公園に着いたのは12時30分だった。公園の一番奥の野鳥の餌場に行ったが、バードウォッチャーは誰もいなかった。餌場をのぞいたところ、ヒマワリの種を食べた殻が数個あったが、粟の方は食べられていないようだった。やはり餌場に野鳥たちはやって来ていないのだろう。30分だけ待つことにした。周りの大きな木の枝ではヒヨドリが10羽ぐらい騒いでいたので、小さな野鳥たちがやって来ないかもしれない。
餌を探しにアカハラがやってきた
待っているとアカハラらしきクックッキュキュキュと、くぐもるような鳴き声が聞こえてきた。アカハラは冬鳥である。この森にきっと来ているのだろうと待っていると、ヒヨドリに混じって1羽のアカハラがやってきた。黄色い目のリングが鮮やかだ。次に同じ仲間のシロハラもやってきた。神場公園でも出会ったシロハラだが、直ぐに飛び去ってしまった。
餌を探すツグミ
スマートなツグミもやって来て、木の実を啄んでいた。ツグミも冬鳥として日本に渡ってくる中型の鳥である。この冬に初めて見るツグミだった。日本に渡って来た当初は、集団で生活していることが多いのだが、この個体は1羽でいたので、日本に渡ってきてから時間が経っているのだろう。
アクロバチックに食事中のメジロ
メジロの動きはアクロバチックだ。チィチィ鳴きながら餌を食べていたが、逆さになって餌を食べることなど普通にできる動作だ。餌場で30分ほど待ったが、クロジもルリビタキも現れなかった。まだ冬鳥として渡ってきていないのだろうか。
カワセミが小枝で休んでいた
カワセミの雄が小枝に留まり、じっと水面を見ていた。小魚が浮き上がってくるのを待っているようだった。しばらく見ていたのだが、獲物が見つからなかったのだろう。弦から放たれた矢のように、水面上を一直線に飛び去った。きっと別の狩場に移動したのだろう。
信号待ちをしていた時に、ヒッヒッヒッという小さな鳴き声が耳に届いた。ジョウビタキの鳴き声である。その声は信号を渡った先から聞こえてくるようだった。鳴き声が聞こえた方に向かってみると、通信線の上に留まったジョウビタキのメスの姿があった。この冬に初めて見るジョウビタキの姿だった。ジョウビタキも渡ってきていたのだ。
ジョウビタキの雄
桜並木の中を歩いていると、何かが飛んで来て梢に留まった。双眼鏡で確認するとジョウビタキの雄だった。ジョウビタキの雌を見てから10分後くらいだった。桜の枝が交錯し、雄を撮影することができなかった。しばらくすると飛び去ってしまった。飛び去った方向に歩きながら双眼鏡で確認すると、タラの木の先端に留まっていた。すぐに撮影した。翼にある白い紋を写そうと移動している時に、モズがジョウビタキに襲いかかった。ジョウビタキは素早く飛び去った。ボーッとしていると、猛禽類の餌になってしまうのだ。
花見川の土手にスイセンが咲きだした
これまでに出会った野鳥は、シジュウカラ、カワラヒワ、コゲラ、エナガ、メジロ、アカハラ、シロハラ、ツグミ、カワセミ、カルガモ、ジョウビタキを加えて26種類となった。出会った野鳥は相変わらず留鳥が多いが、冬鳥としてはアカハラ、シロハラ、ツグミ、ジョウビタキ、コガモ、オオバン、バン、カンムリカイツブリに出会えた。まだ渡ってきていないのかクロジやルリビタキには会えなかった。これから気温は増々下がっていくが、防寒対策をしながら野鳥の愛くるしい姿を見ていこうと思う。