チバニアンへ行ってみた

 

 

養老川の崖に印されたチバニアンの地磁気逆転地層採取跡

 

地球が太陽系のひとつの星として誕生してから46億年たつが、その間に北極と南極が逆転する地磁気逆転現象が何度か起きている。一番最近では約774千年前から約129千年前(新生代第四紀更新世中期)の時期に起きたとされている。その地層が地球のいくつかの場所に現れており、千葉県市原市田淵の養老川流域の崖もそのひとつであるが、その時期の地磁気逆転地層には国際的な名称が付いていなかった。

 

201810月に市原市田淵の養老川流域の地磁気逆転地層が国の天然記念物に指定された。更に、今年20201月、韓国釜山で開催された国際地質科学連合の理事会において、千葉セクションが前期ー中期更新世地質年代境界の国際境界模式地に決定された。これにより、約774千年前〜約129千年前(新生代第四紀更新世中期)の国際的地質年代の名称が「チバニアン=千葉時代」と呼ばれることになった。日本では初めての認定である。

 

チバニアンに指定された場所は房総半島の真ん中を北に進み東京湾に流れ込んでいる養老川の崖にあるので現地を見るために出かけてみた。JR幕張駅から総武線で千葉に出て、JR内房線に乗り換え、更に五井駅で小湊鉄道に乗り換えた。小湊鉄道は東京湾に沿って南下する内房線の五井駅から房総半島の真ん中にある上総中野駅までを結んでいるローカル鉄道である。オレンジとクリームのツートンカラーの1両列車のキハ200型ディーゼルカーは枯れた田園風景の中を進んで行く。金曜日とあって乗客は20名ほどだった。小湊鉄道も昨年の台風の被害に遭い不通となり、先月全線開通したばかりである。

 

田んぼには薄く氷が張りススキやセイタカアワダチソウの白い穂が風に揺れていた。昨年の台風被害にあった屋根が人手不足で復旧されずにブルーシートが被せてあるのが目立った。田んぼでは野焼きが行われ、田起こしも始まっていたが用水路の被害も目立つ。崖は崩れ、竹も倒れ、杉が倒れたままになっているのも目立った。復旧への手が回らないのだろう。

 

氷柱が下がるチバニアン地層

 

冬を代表するツバキやサザンカに代わって春を呼ぶウメの花が咲きだしている。途中の里見駅のホームにカッパ、クマ、お姫様の木彫りの像が置かれていた。お姫様は八犬伝の伏姫であろうか?

 

チバニアンがある月崎駅で下車したのは私を含めて3人だった。五井駅の跨線橋でもらった『チバニアン・ガイド』に書かれていた道案内地図を参考にして歩いた。月崎駅から40分ほどで養老川のチバニアンと命名された崖に着いた。川原に降りる場所が変更され、以前の梯子に代わって新しい道が10m下流に付けられていた。川岸に降りると水際には薄氷が張っており、スリップしないように細心の注意で進んだ。

 

崖の上から氷柱が下がっていた。地磁気逆転地層から年代測定資料を採取するための穴が縦1列に開けられていた。赤色、黄色、緑色の表示がなされ、真ん中の黄色の部分が地磁気逆転地層と呼ばれているものだった。

 

天気予報では今日の最高気温は7℃であった。川岸の温度は低い。流れを眺めながらジェットボイルで作ったラーメンの暖かさが心地よく感じられた。川の向こう岸では水際を小石伝いに尾羽を上下に振らせながらセグロセキレイが歩いていた。30分ほどの滞在中に10人の見学者が訪れていた。チバニアンは地味であるが千葉県の新しい観光スポットになったようである。

 

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