女性の視点が必要な避難所の運営
講演する埼玉県男女共同参画推進センターの瀬山さん
3月15日発行の『ちば市政だより』に千葉市防災リーダー研修会開催の記事が載った。開催日時は3月11日、14時40分開始と書かれていた。自分の予定を確認すると午前中は幕張中学校の卒業式に出席予定だが、午後は空いていたのですぐにメールで参加申し込みを行った。
3年前の3月11日は金曜日で午前中は今回と同じく幕張中学校の卒業式だった。その卒業式に出席した後に大手町の職場に向かった。職場に到着し、いつものように仕事をしている最中にあの東日本大震災が発生したのだった。当時の私の職場は通信回線の保守という職業上の必要性から天変地異に備えての情報収集のためテレビが常時設置されていた。14時46分の大揺れの後、全てのテレビ局の放送は臨時番組となり地震報道に切り替わった。なかでもヘリコプターから中継されてくる津波映像は映画館で見ているかのような錯覚を起させるもので、東北地方の各地で実際に起こっている現場映像だという現実感が湧かなかった。それから早くも3年間が経過したが被災者の仮設住宅住まいは続き、復旧復興は遅々として進まず、被災住民が希望する形とはほど遠いことがマスコミによって報道されている。
千葉市防災対策課の主催によって東日本大震災が起こった3月11日14時46分に焦点を当てる形で今回の防災リーダー研修会は計画された。研修会会場は収容人数1000名の千葉市市民会館大ホールだった。私は14時20分頃に会場に到着し受付で渡された資料に目を通して開会を待った。災害対策課の大岡課長の司会で始まり、千葉市主幹の挨拶のあと1分間の黙祷が行われた。東日本大震災は、死者、行方不明者、関連死者は2万1000人を超える人たちの命が奪われ、家屋は破壊され、津波の被災者および福島第1原発事故被災者が重なり3年経過した現在でも26万人が日本各地に避難しているのが実情である。しかし、この被災者のことは時の経過とともに風化され人々の関心事から離れていきつつある。しかしながら天災は自然現象として必ずやってくることであり忘れてはならないことだ。
記念講演は埼玉県男女共同参画推進センターの瀬山紀子さんが東日本大震災後に大規模避難所として「さいたまアリーナ」および「埼玉県男女共同参画推進センター」で被災者を受け入れた側としての実践からの教訓を1時間に渡って話された。
話された内容は4項に渡っていた。
・東日本大震災後に改めてクローズアップされた防災対策
・女性と男性で被災時の困難はどう違うのか
・災害対策への男女共同参画の意義
・国の取り組みと実践のために
というもので大雑把に捉えると、起こりくる災害にたいして事前に準備できることは何か、その時に考慮する事項は何か、というものだと思う。
大規模な災害になればなるほど起こった時の混乱は正比例する。その時に予め災害を想定し準備しイメージトレーニングを行っていたかどうかで、その後の対応は明らかに変わってくる。瀬山さんは特に重要なのは避難所を運営していく時の女性の視点の必要性だということを強調されていた。今回の防災リーダー研修会に参加した男女比率は会場をざっと見渡したところ9割5分が男性で5分が女性というものだった。この割合が災害発生後に開設された避難所リーダーの比率になると仮定した場合、避難してきた女性、子ども、障害者、高齢者に対する心遣いに支障が出るだろうと感じた。それは「女性と男性で被災時の困難はどう違うのか」の中で話されたが、全く知らない人達との共同生活の中で女性の着替え場所の確保、洗濯後の下着の干し場、男女別トイレの問題、生理用品の受け渡しの問題、男女雑魚寝ではなく間仕切りの問題、等々・・・
新たに発生する問題を最小限に抑えていくためにも、このようなことに問題意識を持って避難所の運営を考えていかなくてはならないだろう。避難所の運営に際しては、声が大きいものの意見に沿って避難所を運営していくようであってはならず、常に立場の弱い人たちの視点からの避難所運営を考えていくべきだろう。千葉市内では既に40%近くの地域で来るべき大災害に向けて避難所設置のための話し合いが進められている。遅ればせながら私が住む幕張地区でも同様な話し合いが始まろうとしているが今回の研修会で学んだことを考慮しながら避難所の運営が出来たらいいと思う。