若年性アルツハイマー

 

次へ進む

愛するがゆえに別れの手紙を書く スジン

 

 あまりにも悲しい物語だと思った。

建設会社の社長令嬢のスジンは笑顔の可愛い天真爛漫なお嬢様。現場監督のチョルスとコンビニで運命的なコカコーラの出逢いをする。2人はすぐに恋におちる。温かい家族に囲まれて育ったスジンと母親からも捨てられ孤独に生きてきたチョルス。やがて2人はいくたの困難を乗り越えて結婚する。チョルスは建築士の試験にも受かり未来は輝き、幸せいっぱいの2人だった。しかし、新妻スジンは、物忘れがひどくなり、自分の家への道順すら忘れてしまうようになる。病院を訪れたスジンは「若年性アルツハイマー症」と診断される。

27歳の幸せいっぱいの新妻に突然若年性アルツハイマーの診断がくだったのだ。こぼれるような笑顔が可愛い新妻は悩みおののき肉体の死の前に精神の死が訪れるという、頭の中の記憶がまるで消しゴムで消していくように次々と消えていくことの非情さに自然と涙が頬をつたい落ちた。愛するがゆえに最愛の人に置手紙を残して姿を消してしまうスジン。

 

 原作は4年前に日本テレビ系列で永作博美・緒形直人主演で放送された「ピュアソウル〜君が僕を忘れても〜」である。主題は純粋な気持ち・純粋な心・純粋な精神、だろう。それが韓国で映画化されたのは昨年のことである。タイトル「私の頭の中の消しゴム」は今秋日本で上映されている。さっそく観にいった。

 主演のスジン役はソン・イェジン。美しく愛くるしい笑顔にひとめでとりこにされてしまう。夫のチョルス役はチョン・ウソン。こちらも表現力豊かな素晴らしい役者だと思う。

 

記憶が消えていくという、どうしようも出来ない進行性の病気=アルツハイマー症。私たちは生まれてきたときから1日1日の積み重ねがその人間を形作っていくわけだが、それは言い換えれば記憶の積み重ねでもある。記憶の積み重ねが個人を形成している。その記憶が次々に消えていく。しかも新しい記憶から順番に消えていき、昔の記憶が最後まで残っていく。それさえもやがて消えていく。アルツハイマー症とはそういう病気だという。恐ろしく悲しい病気だと思った。しかも20代という若さでの病気は進行性も早く精神の死が急速に訪れる。「私の頭の中の消しゴム」は純愛映画だけれど悲しすぎる物語だ。映画を観ていて何度も心の中で泣いてしまった。

 

戻る