やわらかい緑の上高地

久しぶりの家族ハイキング

 

                                       岩井彰子

大正池

 上高地へ行ってみたいな・・・

と.つぶやいた私のことばを聞いて

「よし.行こう」

と.すばやく上高地へのハイキングを計画してくれた夫,

 

 6月なので雨を心配し.歩くコースも無理のないようにした。

金曜日の夜11時の新宿先のバスに乗って出発。

夜行バスは十分睡眠がとれないので好きではないか時期的に朝の便がないということなので仕方ない。

とにかく寝ようと思った。

5時に沢渡に到着し.バスを乗り換えて大正池で下車。

大正池ホテル前のベンチで朝食をとる。

メニューはラーメン.カレーパン.チーズ野菜ジュース・・・

早朝で肌寒く.ラーメンのおいしかったこと。

キジバトが食べものをさがして近くにやってきた。

愛と大がベビースターラーメンをごちそうしている。

「箸がない」

と言って.そばにはえている篠ダケをナイフで切りとり.削ってお箸を作る夫。

さすがだ。

 

 早朝の大正池は朝もやがかかり.不思議な雰囲気がただよっていた。

食後、大正池のはとりで.のんびりすごす。

水がとてもきれい。

人見知りをしないカモたちが近づいてくる。

愛と大はスナック菓子を与えて喜んでいる。

かわいい。

私は夜行バスでぐっすり眠れず、頭がボーツとしていて夢うつつの感じである。

池のほとりの遊歩道をのんびり歩きながら.美しい田代池を眺め、コガモと遊ぶ。

田代橋近くで一休み。

夫と私は昼寝。子どもたちは川べりで遊ぶ。

川べりに建つ「上高地温泉ホテル」と「清水屋ホテル」は、とても美しく一度泊まってみたい。

 

 ウエストンレリーフの前で記念撮影し.河童梼から小梨平キャンプ場に向かう。

そこで上高地音楽祭として森山良子のコンサートが行われるのだ。

晴れていればバックに前穂高岳と明神岳が見えすばらしい舞台になるだろうに.あいにく曇り空であった。しかし.彼女の歌声はすんでいてとても美しく.しあわせな気分にしてくれた。私は昔からのファンだったので.なつかしし歌を一緒に口づさんでいた。

子どもたちは「お母さんより若いね」なんていいつつ.居眠りをしていた。

(歩きつかれてホッとして.心地よい音楽だったのだろう)

ポツポツと降りだした雨もだんだんと強くなり.1時間もすると「さむい!」と子どもたちが言いだす。心残りはあったがそこを去り.その日の宿である明神館に向かう。

カッパをきて傘をさしつつ・・

 

 明神館は、お風呂も食事もとてもよかった。

夕食時の生ビールがきいて.夫も私も.早々に眠くなった。

結局、4人ともに8時前に就寝。

翌朝、7時に朝食をすませ荷物をあずけて.徳沢に向かう。

小雨が降りだし.大はブツブツ怒っている。

徳沢園でおやつを食べて.新村橋の吊り橋で遊んだあと.帰りは雨もやみ足取り軽やかにおしゃべりもはずむ。

みどりがやわらかく美しい。

小鳥のさえずりが澄んだ空気の中に響きわたる。

心地よい音の中にいる。

 

 帰り道、一人の女性に会う。

大が「アッ.山小屋でボクの前にすわっていた人だ」と気づく。

同じ明神館に泊まっていた人らしい。

「もう.徳沢まで行ってこられたのですか」

「はい」

「ずいぶん早いですね」

「徳沢まで行かれるんですか」

「ポツボツと行きます」

上品そうな.その老婦人はゆっくりと歩いていかれた。

(上高地が好きなんだろうな)

(どんな思いで歩いているのかな)

と一時、思いをはせるが、再び森のなかの散歩道を歩きだす。

 

 明神館まで戻り一休みし.リュックを背負い.明神池を見学した。

梓川べりを川の流れを見ながら.きのうとは反対側を歩く。

笹舟にこった大は道においしげるクマザサをとっては舟にして.川に投げ込む。

 

 今、目をとじても.緑いっぱいのその時の様子が目に浮かぶ。

本当にきれいなところ.上高地。

 

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