愛の四季
岩井 愛
春の風
春は風に乗ってやってくる。
ひゅうっと風が一ふきすると.そこのたんぽぽたちは目をさます。
もう一回ひゅうっとふけば.小鳥たちが目をさます。
風は春のせいれいなんだ。
春の芽をいっぱいいっぱいリュックに入れて.まきにくるんだ。
桜の木には.ほかの木よりも.もっと早く.もっといっぱい春の芽をまくんだ。
花見の人たちのためにね。
風は春のせいれい。
ものすごく.やさしいんだよ。
夏の海
夏.海はいそがしくなる。
人がいっぱい来て.頭がこんがらがってしまう。
悪いことと良いことの見分けできなくなって.子どもをさらってしまうんだ。
逆に.海が静かになってしまうと.こんどは人を呼ぶ。
おしよせる波が手になり
「こっちに.こーい」
と人を呼ぶ。
私が海に遊びに行くと.しおからいにおいが鼻をくすぐる。
私が行くと.うれしいのかな?
秋の葉
黄色になった葉が一枚二枚と落ちていく。
葉が一枚落ちると.秋に一歩近づく。
秋を呼ぶために.せいれいが風となって葉をとっていく。
葉が黄色になるのも.せいれいがいるから。
秋のせいれいも.春のせいれいのように.とってもやさしい。
小さい動物のために実をつけてあげるんだから……。
冬の雪
「あっ」
窓に白い雪が。
もう来たんだなぁ。
もしかして.冬のせいれいの分身かもね。
外は.うっすらと白い道。
少しはそっとしておこう白い道。
でも.パシャパシャ。
あーあ.すぐにぐしゃぐしゃ.ぬかる道。