極夜のアイスランドへ

 

 

20181215日〜21日までの7日間で、「マグマと氷の大地・アイスランドとフィンランドの旅」に行ってきました。その旅のレポートを6回に分けて報告します。

 

 

1、フィンランドの首都・ヘルシンキ

 

日本からアイスランドへの直通便がないためヘルシンキやロンドンで乗り継いでアイスランドへ向かいます。成田空港からフィンランドの首都ヘルシンキ空港へは約10時間20分の飛行時間で到着し、日本との時差は7時間、12月の日照時間は6時間、平均気温は最高1、最低ー4です。

 

ヘルシンキ空港に到着した時には雪が全くありませんでしたが、曇り空で気温はー6でした。空港からバスで市街地観光に向かい、ヘルシンキ大聖堂に着いたのは1620分でしたが、日没後のため薄暗い中での観光となりました。

 

ヘルシンキ大聖堂前のクリスマスマーケット

 

市内の交通は、路面電車、バス、地下鉄、乗用車、徒歩ですが、石畳の上を走る路面電車はホッとする風景でした。大聖堂前の元老院広場でクリスマスマーケットが開かれていました。広場中央にメリーゴーランドが回り、順番待ちの長蛇の列が出来ており、100張りくらいのテントで様々なものが売られていました。

 

食べ物、飲み物、クリスマス用品、陶器や木器の手作り作品、金物類、絵画や絵葉書、衣類、バターや肉類、等々、日本のお祭と大体同じでした。老弱男女のたくさんの人たちがしっかり着込んでマーケットに繰り出していましたが物価が高いですね。私が買った木作りのコーヒーカップは日本円で5000円でした。

 

私が買った木作りのコーヒーカップ

 

私はユーロを持っていたので現金払いをしましたが、驚いたのはキャッシュレス化が進んでいて、全てのテントで簡易レジに商品の値段を打ち込み、銀行カードを読み取って支払いは終了です。

 

翌日からのアイスランドではユーロもドルも使えないために、私もカード支払いにしましたが実に簡単でした。カード支払いで注意しなければならない点は、バーコード読み取りは問題ないのですが、手打ちの場合はヒト桁間違うととんでもない額が引き落とされることになるので、打ち込み額を必ず確認する必要があります。また、簡易レジのカード読み取りには暗証番号の確認が省略されているために、カードを紛失した場合は他人に使用される可能性が大きいということで十分な注意が必要と感じました。アイスランドでは、昼食と夕食に毎回ビールを飲んでいましたが、度々打ち込み額が違っていました。

 

 

2、地球の割れ目・ギャウ

 

2通目のレポートはアイスランドにある世界遺産「地球の割れ目・ギャウ」です。

 

フィンランドのヘルシンキ空港からアイスランドのケフラヴィーク空港に飛び、3時間50分の飛行時間で日本との時差は9時間となり、ほぼ地球の反対側です。12月は1年の中で日照時間が一番短くなる「極夜」になり、1日の日照時間は4時間です。11時過ぎに日の出を迎え、15時には日は沈みます。

 

地球の構造は中心部から核、マントル、プレートとそれぞれを包み込むようになっていますが、地表に現れたプレートが北米プレートとユーラシアプレートに割れていく場所がギャウ(アイスランド語で割れ目の意味)と呼ばれています。

 

プレートの割れ目は通常は海の中に沈んでいる海嶺となっているのですが、アフリカの大地溝帯とアイスランドのギャウの2ヵ所で陸地に現れています。アイスランドの場合は幅が7km長さが40kmに渡っています。

 

地球の割れ目内を北米プレートからユーラシアプレートへ歩く

 

割れ目の片方の北米プレートから割れ目の中に降り、割れ目の中を歩いて反対側のユーラシアプレートのほうに歩きました。

 

割れ目の底まで降りると、底から割れ目の端までの高さは30m程でした。割れ目の中には草原が広がり、川が流れ、湖ができ、家も建っていました。そして西暦930年、世界初の民主議会が開かれた場所に国旗掲揚の柱が立っており、割れ目を一望できる展望台があり、世界遺産の説明文が設置されていました。

 

このギャウで発生したユーラシアプレートは日本近海で太平洋プレートとぶつかり、年間12cm地球の奥へと沈み込んでいく一連の動きとなっています。天文学での地球の自転・公転とは違い、地質学でも地球は動いているというのを感じました。

 

 

3、氷河から流れ出る滝

 

3通目のレポートは、「氷河から流れ出る滝」についてです。

 

地元ガイドのアルニ・クリスチャンソンさんはアイスランド大学日本語学科卒業後、早稲田大学に留学し卒業、更に東京藝術大学大学院を卒業し、日本滞在9年後の201610月にアイスランドに帰ってツアーガイド業をしている方でした。

 

 

添乗員の三輪さんとのスコゥガフォスの滝、セリャラントスフォスの滝の裏側

 

アイスランドの広さは、日本の北海道と四国を合わせた広さに匹敵し、その11%が氷河に覆われています。その氷河が融けて流れ出した川が各所で滝を作り出しています。

 

私たちが訪れた滝は、アイスランド最大で黄金の滝を意味するグルトフォスの滝、高さ60mの豪快なスコゥガフォスの滝、滝の裏側に回り込めるセリャラントスフォスの滝、川壁を伝い1kmの幅を持つフロインの滝、子どもたちの滝を意味するバルナ滝でした。

 

日中の気温が710と高く、歩道が氷結しておらず靴裏にアイゼンを履く必要はなかったのでラッキーでした。氷結していればスリップのため滝に近づくことは出来なかったと思いました。滝の裏側から流れ落ちる滝を見るというのも初めての体験でした。崖ではカモメの仲間が営巣しており、滝の周りでたくさん舞っていました。

 

氷河から流れ出る水はグラッシャーミルクと呼ばれているように少し乳白色がかった水でした。アイスランドにある氷河は地球温暖化の影響で50年後には消滅されると予想されています。氷河が消滅すると川が消え、滝が消え、温泉が消え、飲料水が無くなり、アイスランドに住む人たち、動物たちにとっては死活問題となります。

 

ガイドのアルニさんは地球温暖化を防ぐ対策をみんなで考え、実施することの重要性を訴えていました。

 

 

4、ブルーラグーン

 

4通目のレポートは、アイスランドで食べた料理と世界最大級の露天風呂である「ブルーラグーン」です。

 

アイスランド=氷の国という国名から、最初はずいぶん寒いだろうと思っていました。ところがメキシコ湾流という暖流が流れているために、北欧としては比較的に温暖で北海道よりも暖かいと思います。

 

島の周りを海に囲まれているために漁業が盛んで、ツアー中に出された魚介類料理も岩ガニ、バイ貝、ムール貝、牡蠣、海老、サーモンなどどれも美味しかったです。羊や馬の放牧も行っており、ラム肉料理はクセもなく軟らかく美味しかったし、鶏肉料理も豚肉料理も美味しかったですね。スキールというヨーグルトとチーズの中間のような乳製品も美味しく、アイスランドの国民食のようです。

 

アイスランドの首都はレイキャビックです。そこに2泊しましたので市内観光にも出ました。最初に訪れたのはホフディハウスでした。米ソ冷戦を終結させるためにアメリカのレーガン大統領とソ連のゴルバチョフ書記長が会談を行った家です。白い色が印象的な2階建ての瀟洒な建物でした。なぜアイスランドで会談したのかというとアメリカからもソ連からも距離的に一番近い国がアイスランドで、四方を海に囲まれているので警備上からもアイスランドが選ばれたとのことでした。

 

ハトルグリムスキルキャ教会

 

次に訪れたのはハトルグリムスキルキャ教会でした。完成までに40年の歳月を費やしたとのことでしたが、外見は両翼を拡げたロケットのようでした。中に入るとシンプルな装飾で中央の祭壇と両壁に掲げられた絵画、左側のステンドグラス、入り口天井からさがるパイプオルガンは実に見事なものでした。エレベーターで展望台に上がればレイキャビックの街並みを一望できるとのことでしたが、時間の関係で展望台には上がりませんでした。

 

外壁がガラス張りのオペラハウスも訪れました。正式名はハルパ・コンサートホールですが、柱状節理玄武岩の形からデザインされた文化複合施設で、2階の広場では子どもたちがサンタクロースと歌を唄いながらツリーの周りをまわって楽しそうでした。

 

世界最大級の露天風呂である「ブルーラグーン」は入浴時間2時間の完全予約制で予約を取るには2〜3週間前でないと無理とのことでした。入館料が8100円もするので日本人の感覚では高すぎると思いましたが、スタッフの多さにはビックリしました。また、ワンドリンクサービスが付いていましたので私は1100円の生ビールを飲みました。

 

白壁パック

 

ブルーラグーンは隣のスヴァルツェンギ地熱発電所が地下2000mから汲み上げる地熱海水を利用して造られた温泉施設で青みがかった乳白色の温泉でした。水着を着て入る温泉プールで自然の溶岩地形を利用しており、場所によって温泉温度が違っていました。温度が38度前後と比較的に温めなので、のんびり入るのにはピッタリでした。

 

ミネラル豊富で肌に良いとされている泥パックを無料で試すことが出来るので顔に塗ってみると白壁のようになりました。泥が乾いてくると顔が突っ張ってきましたので、温泉で洗い流しましたが白い泥は「シリカ」と呼ばれていました。泥パックなど初めての体験でしたが、こころなし肌がすべすべした?感じでした。

 

私たちが訪れたのは冬至近くで最も日照時間が短い時期でしたから観光場所を回っても薄暗い感じで、夏至の白夜のころに訪れたら違った感じになるだろうと思いました。

 

 

5、氷の洞窟

 

5通目のレポートは「氷の洞窟」体験です。

 

氷河の内側が夏の時期に融けて空洞が出来ます。その空洞が冬になって再度氷結し「氷の洞窟」が出来ます。その洞窟探検を体験することがアイスランドの冬の観光の目玉としてありました。しかし、毎年氷河専門家を招いて洞窟の安全性の確認が必要であるために、新たに2015年6月にオープンしたのがアイスランドで2番目に大きいラングヨークトル氷河に人工でトンネルを掘り、氷の洞窟体験をするという観光施設です。この場所は1年間いつでも洞窟に入ることが出来ます。

 

氷の洞窟の中へ

 

観光バスに乗って施設受付まで行き、トラック型の雪上車に乗り換えます。雪上車は元は軍隊が使用していたもので、ロケットを搬送していたのを改造したとのことでした。施設受付から標高にして1100mほど氷河上を雪上車で登りましたが、氷河上は強く冷たい風が吹き、断面は真っ白で割れ目などは青白く輝いており、氷河に掘られた洞窟内に入っていきました。

 

氷河内は当然のこと滑りますから靴裏にチエーンアイゼンを取り付けました。幅3m、高さ3mほどのトンネルが伸びており、トンネル内は所々にLEDが点灯しているのでヘッドランプを持たなくても歩くことが出来ました。

 

洞窟内に教会が作られており、古い教会は集会場となり、別の新しい教会には席が作られ、既に13組の結婚式が行われたとのことです。プロポーズは40組が行ない全てOKだったとのことです。凄い成功率ですが、この場所まで来るのが大変だと思いました。

 

新教会の中で歌う現地ガイドのソフィアさん

 

新しい教会で現地ガイドのソフィアさんがアイスランドに古くから伝わる歌を歌ってくれました。静かな歌でしたが物悲しいように私には感じられました。ソフィアさんはプロ歌手とのことで歌はとても上手でした。

 

もらったパンフレットを見ると、1月〜12月まで通年営業で13回入場可能、料金は19500円、雪上車は往復で2000円となっており、私たちの他に2組の団体が氷の洞窟体験に入っていました。トンネル内は冷えるので防寒のためのオーバーコートやオーバーシューズを無料で貸し出していました。

 

氷河は動いているので少しずつ洞窟内が変形しているとのことでしたが、青白く光る場所は幻想的な雰囲気でした。アイスランドの外貨獲得について以前の第1位は漁業でしたが、現在は観光とのことです。

 

 

6、オーロラ鑑賞

 

最終回の6通目はオーロラ鑑賞のレポートです。

 

オーロラは北極、南極から数千km離れた緯度60度〜70度の「オーロラベルト」と呼ばれているドーナッツ状の地域に頻繁に出現し、太陽から流れ出す電子や陽子でできた太陽風(プラズマ)が、地球を覆う大気中の酸素や窒素の原子と衝突して発光する自然現象です。オーロラは地上約80km500km上空に出現し、北緯64度〜66度のアイスランドは全土がオーロラベルトの中に入っています。

 

アイスランドでは9月〜3月がオーロラ鑑賞のシーズンですが、雨の日や曇りの日は見ることが出来ませんので、気象という運を味方にしないとオーロラに出会えません。雲の動きから1時間単位でオーロラ出現予報を行っている「オーロラフォアキャスト」というネットサイトで確認しながらオーロラの出現を待ちました。

 

今回の旅では4回オーロラ鑑賞のチャンスがありましたが、その内の2回で緑の光を発するオーロラに出会うことができ、とてもラッキーでした。

 

ホテル横から見たオーロラ

 

1度目はホテルの電話でオーロラ出現時に起こしてもらえるよう「オーロラコール」を設定して寝たところ、午前3時15分過ぎにメロディーが流れました。最初は???なんだろうと思いましたが、起きだして非常口から北西方向を確認すると明るく輝くオーロラが出現していました。オーロラは北〜北西方向に出現するもので、1時間近く輝いていました。

 

翌朝、添乗員さんがホテル側に「オーロラコール」を各部屋に連絡したのか確認すると、ホテルの担当者は連絡していない、というのでメロディーがなぜ流れたのか不明です。同じツアー観光客は誰も見ておらず、私と同室の本多さんだけが見たことになり非常にラッキーでした。翌朝の食事時に撮影した写真を見せると歓声が上がりました。

 

緑色に輝き空を舞うオーロラ

 

2度目は「オーロラハンティングミステリーツアー」バスに乗ってホテルから1時間ほど東に走った国立公園の観測ポイントでオーロラに出会いました。この時のオーロラは2時間近く様々な形に変化して輝いていました。

 

オーロラ撮影に使った私のカメラはSONYα6000、設定はISO8001600、シャッタースピード:20秒、絞り:開放、ピント:マニュアル、無限大、三脚使用、タイマー:3連続、レンズ:16mm最短、などに設定しましたが、現地で映し出された画像を確認し、オーロラの発光強度によってカメラ設定の調整が必要となりました。

 

私のカメラのオーロラ映像を見た東洋系の女性が、素晴らしい写真なのでスマホに送ってほしいと頼まれましたが、カメラから転送できないので丁重に断りました。その女性は私のカメラのモニター映像をスマホで撮っていました。

 

今回は、空に輝くオーロラを肉眼で見ると、白い雲のようにたなびいており、薄い緑に見えましたが、写真撮影すると綺麗な緑色に輝いていました。

 

オーロラハンティングで見たオーロラ

 

今年は太陽の黒点で確認することが出来る太陽活動が極めて弱い異常現象が続いており、地球に到達するプラズマも微弱になっているため、衝突時に発光する光量が少なく肉眼ではオーロラがハッキリ見えないのだろうと思いました。

 

今回のオーロラ観光ツアーで万一オーロラを観ることが出来なかった場合は、黒点活動が活発となる3年〜4年後にカナダのイエローナイフに出かけようと仲間と話し合っていましたが、今回はオーロラが見えたので満足でした。(^^

 

写真に写っている私の後方でオーロラが舞っていました

 

3日前の25日にNHK1930分から「天空のスぺクタル」というタイトルでカナダのイエローナイフで撮影したオーロラの番組を放送していました。オーロラが緑に輝き、大空を生き物のように動き回る素晴らしい映像でした。

 

私は北欧を訪れるのは初めてでしたが、訪れたフィンランドもアイスランドも落ち着いた雰囲気のところで食べ物も美味しく、街も綺麗に整っており素敵でした。街中には派手な看板など全くなく、大人の国だなぁという印象を持ちました。

 

「ハォカァル」という鮫の発酵食品を酒の肴に買いました

 

アイスランドを離れるときにケフラヴィーク空港で「ハォカァル」という鮫の発酵食品を酒の肴に買いました。鮫は生きているときから肉はアンモニア臭が強いのですが、買った「ハォカァル」も臭いが強烈で、蓋を開けた途端に部屋中に臭いが拡がり、口に含むとクサヤよりも強烈です。現地ガイドのアルニさんも、搭乗員の三輪さんも、本当に買うのですか? と言っておりましたが、強烈な刺激に負けずに毎晩少しずつ食べています。

 

今回のレポートで「極夜のアイスランド・オーロラツアー」の報告を終わります。外国の山旅を一緒にしている仲間との楽しい旅でした。

 

戻る