愛、27才の君に
2013年3月25日 大学院修了式
愛、27才の誕生日おめでとう。
君は昨年3月に東京藝術大学大学院を修了し以前から希望していた職種であるテレビ業界に就職し、毎日スタジオに入っています。就職した会社は、スタジオの後景をデザインし大道具に手配した後、組み立てから解体までを管理する会社とのことです。
君が今の会社に入社する際に父さんは労働条件を訊ねました。すると君の答えは「女性は日勤が殆どで遅くても20時頃には退社できるみたい」と言っていましたが、実際に入社して配属された部署の関係で勤務表も週単位で変動し、徹夜も含め全く予測の出来ない過密労働で、夜中の0時過ぎにスタジオを出てタクシー券で自宅に帰るのも度々とのこと。大体想像はしていましたが、全くテレビ業界というところはヤクザな業界だなぁと父さんは改めて思いました。
現在の君は入社1年目の見習社員の立場で先輩につきながら仕事を覚えている最中とのことですが、他の会社の人との打ち合わせなどに出ると「この業界に何年おられるのですか?」などという質問を君は受ける場合があるとのこと。「それは君の態度が大きいからではないのか?」とからかってやると、君は「物怖じしないで、ずけずけ意見を言っているからだと思うよ」とのこと。1年目から全く逞しい限りです。
君の話で面白かったのは、君が社長と会食するのに際して、「何が食べたいか?」と聞かれたので、「寿司」と言ったところ値段の書いてない寿司屋に連れて行かれたので、好き勝手に、ウニ、トロ、アワビ、タイ、エンガワ、アナゴなどを注文し、ビールをジョッキでグイグイ飲んでいたら社長はジョッキ1杯で真っ赤になって出来あがってしまった、とのこと。ビールを十分飲み、寿司もたくさん食べたので「ご馳走様でした、って言って別れた」という話を聞いた時は大笑いしたよ。物怖じしないということはとても大切なことだからね。
今年の1月8日の君の誕生日は君とコンビを組みながら仕事をしている先輩が年末年始を休まずに仕事をした関係で1週間の休みを取ってニューカレドニアに遊びに行ってしまい君が一人で夜遅くまで残業をしなければならない最悪な誕生日でしたね。当日は新年会が企画されており、新年会会場から早く新年会に合流してと催促の電話がかかってきたけれど仕事を片づけなければ翌日のスケジュールに支障をきたすので一人もくもくと作業を続けていたとのこと。全くお疲れ様です。
ヤクザなテレビ業界であっても君は仕事をしていて楽しいと言う。放映されたテレビ番組の制作者一覧に「岩井愛」の名前が載っていたのを父さんは観ました。現在の会社は君自身が選んだ会社なので3年間は続けることだと父さんは思います。「石の上にも3年」という諺がありますが、3年続ければ大体のことは分かってきますから、その時点でテレビ業界というのが君にとって合っているのかいないのかを考えてもいいと思います。人生は1回きりです。自分が好きなことをやることが重要です。
会社員というのはどんなに頭が良くて機転が利いてもそれだけでは十分ではありません。一番重要なのは身体が丈夫で心身ともに健康体であるということです。父さんが会社員の頃、どの職場にも仕事や人間関係に悩み体調を崩す人が必ずいました。会社員は身体が資本ですから、あまり太らずにストレスをためないように気をつけながら日々を過ごしてください。
君の仕事は1年中忙しいようですが、たまの休みなどには以前のように一杯やりましょう。娘と飲む酒は美味いものです。
これで父さんからの28通目の手紙を終わりにします。
2014年1月8日