愛、25才の君へ

 

東京藝術大学正門横で

 

 愛、25才の誕生日おめでとう。

 

 最近の君は勉強にバイトに忙しいようで幕張の家にもあまり帰ってこなくなりました。バイトは美術専門学校の講師、大学の美術講師、NHK制作部、BARのホステス、と4種類を掛け持ちスケジュールでこなしているようです。ま・なにごとも人生勉強ですからね。

 

 昨年3月の東京藝術大学卒業式は楽しみにしていましたが、3月11日に発生した東日本大震災後の自粛ムードで中止になってしまいましたね。群馬のおばあちゃんが卒業式のために振袖を縫ってくれましたが卒業式中止は残念でした。おばあちゃんは85才と高齢なので、この愛のために縫った振袖はおばあちゃんの最後の作品になると思います。卒業式は中止でしたが卒業証書授与は教室で行われましたから、君は縫ってもらった振袖を着て出席しクラスメートと仲良く写真に収まっていました。一緒に出かけた母さんから写真を見せてもらいました。君は輝いていました。

 

 4月からは東京藝術大学大学院へ進みました。来年3月には大学院も卒業し、いよいよ社会人としてのスタートを切るために今年は就職活動です。先日、母さんとリクルートスーツ3点セットとコートを買いに行きました。君が希望している職業はテレビ局の制作部とのことです。制作部の現状がどうなっているのかを体験するために現在NHK制作部にアルバイトで行っていますね。アルバイトに際してはNHKがアルバイト募集をしていないので、自分でNHKに電話をかけてアポを取り、自分の作成した作品を持参して直談判しアルバイトの了承を取り付けてきたと君は行っていました。その話を聞いたとき、さすが君の行動力は抜群だと思いました。

 

1月3日に「NHKニューイヤーオペラコンサート」が毎年開かれており今年の舞台セットは君が考えたのが採用されたとのことで、3日の午後の最終リハーサルに君は立ち会いました。コンサートは19時から2時間番組でライブ放映されました。ここ数年は就職氷河期と言われていますから君の就職も簡単には決まらないかもしれませんが頑張ってください。君の情熱をもってすれば大丈夫だと父さんは思います。

 

 君は今年の2月に同じ大学院の友だちと二人で南米ボリビアのウユニ塩湖に卒業旅行に行く計画を立てたようです。搭乗員はつかずに自分たち二人で出かける弥次喜多旅行のようです。ウユニ塩湖の乾季は湖の水が全て干あがり一面真っ平らな塩の大地が現れ、その塩の大地でスピードレースが行われるので全世界のスピードマニアが結集しスピードレースを競うのが有名ですが、雨季は塩湖一面に薄く水が張るので日の出や日の入り時の光が鏡のような湖面に反射して素晴らしい景色が現れます。その幻想的な美しさは例えようがないとテレビでも放映されていたのを過去に見たことがあります。思い出がたくさん出来るいい旅になるといいね。添乗員がつかない海外旅行はトラブル発生時には全て自分で解決しなければならず少し面倒な面はありますが、それも経験のひとつとして若いときはいろいろな文化に出会い、その体験を通して広い見識を持って欲しいと父さんは思います。

 

これで父さんからの26通目の手紙を終わりにします。

 

2012年1月8日

 

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