愛、21才の君に
東京藝術大学祭
愛、21才の誕生日おめでとう。
君のこの1年は実に変化に富んだものでした。高校卒業以来、美術専門学校での2年間の努力が実を結び、東京藝術大学、多摩美術大学、武蔵野美術大学の3大学の入学試験に合格し、君が一番望んでいた東京藝術大学美術学部へ入学しました。桜が満開の4月のことでした。君の晴れ姿を記憶しておこうと入学式には父さんと母さんが一緒に出かけました。君の嬉しい笑顔が満開の桜の花よりも輝いていました。今、目を閉じれば君のその笑顔は父さんの記憶の底から蘇ってきます。
父さんは君が生まれたときに親として子どもと共に成長していこうと思いました。君が1才のときは父さんも君の親として1才なのです。君が10才の時は父さんも10才。君が20才の時、父さんも親として20才なのでした。君たちが何かあるたびにその状況を共有しようと思い、様々な行事に父さんは会社を休んで参加しました。そういうことを通しながら子育ては親育ちでもあることを実践の中から1回きりの人生を共に考えていこうと思ったのです。
小学校の入学式、運動会、授業参観、学童保育やPTA行事、卒業式。中学校の入学式、体育祭、授業参観、文化祭、PTA行事、卒業式。高等学校の入学式、文化祭、3者面談、卒業式。大学の入学式、藝大祭、数え上げたらきりがありません。その他にも家族での様々な旅行やイベントの数々に1年1年の経過の中で君の成長を見守ってきました。
君の今年1年の出来事の節々に父さんの思い出の数々も出来上がっています。偶然にも君の誕生日と重なった成人式の朝、快晴の元で幕張海浜公園の松の前で記念写真を撮った後、成人式の会場であるポートアリーナまで車で送ったこと。藝大入学前に取手キャンパスの下見に出かけた後に1年間生活することになるマンションの下見と契約を済ませたこと。夏の藝大祭では見学に出かけた上野の音楽学部キャンパスで君が中心になり仲間と共に作成した手作り神輿の前で記念写真を撮りました。見事な神輿でした。
由美ちゃんと一緒に(祐樹の結婚式で)
父さんは君のその時々の場面に出きるだけ参加し君の気持ちを理解しようと努めてきました。ですから、君の思い出のポケットには沢山の思い出が詰まっているように、父さんのポケットにも君との思い出が沢山詰まっています。でも思い出作りの期間ももう少しです。父さんが君と一緒に時間を共有できるのは君の大学卒業と共に終わります。大学卒業と共に君はひとりで歩いていくからです。学生の間は1人で歩いていくための練習期間なのです。十分自分の頭で考え準備し歩き出してください。
君が取手のマンションでひとり暮らしを始めてから君と会うことも話すことも極端に少なくなってきました。君は母さんと電話でたびたび話しているようですが父さんとは少なくなりました。これでいいのだと父さんは思っています。徐々に徐々に自立していく準備なのです。困ったことがあったら相談してください。父さんは心配しながらも君を見守っています。
ではこれで22通目の父さんからの手紙を終わりにします。
2008年1月8日