2009年に読んだ本

 

自宅の幕張から東京大手町の職場まで通勤時間は約1時間です。朝は秋葉原駅で乗換え神田駅から歩きます。夜は東京駅から快速で津田沼駅で乗換えます。乗車時間はともに30分程度です。その時間が私の読書時間となります。読書は、既に失ってしまい実体験できないものの追体験が可能ですし、様々な問題点について考える契機を与えてくれるものだと思っています。1週間に1冊を目標として1年間に50冊ほどの本を読むように心がけています。

 

ボクシング関連(5冊)

・リングの言霊:岸田直子、・ボクシング名勝負の真実:原功、・ボクシングにとりつかれた男:ジョー小泉、・ボクシングマッチメーカー:ジョー小泉、・生きるために人は夢を見る:林建次、

 

ボクシング関連の本は、息子の大がボクシングを始めてから読むようになったジャンルです。月刊誌の『ボクシングマガジン』を毎月購読し、ボクシングの知識を深めると同時に試合スケジュールを確認し、観戦したい試合があると終業後に後楽園ホールに出かけます。今年は後楽園ホールで200試合ほど観戦しました。4回戦で目茶苦茶な戦い方をしている選手でもプレッシャーに打ち克ってリングに上がり真剣勝負で戦うということだけでも素晴らしいことだと思います。普通の感覚ではパンチの当たり所が悪ければ死んでしまう「リング」という場に上がれるものではありません。ボクシングというスポーツに自分の全存在をかけてリングに上がり、力の限り戦う選手たちは勝負に関係なく輝いて見えます。現在のボクシングの人気は下降気味で日の当たらないスポーツですが、リングに上がるまでの自己節制や精神力の鍛え方は半端でないと思います。人生80年というスパンで考えた時に、若い時にボクシングをやって心身ともに鍛えておいてよかった、と思える日が必ず来ると確信します。

 

ノンフィクション(17冊)

・桶川ストーカー殺人事件:清水潔、・いま生きているという冒険:石川直樹、この地球を受け継ぐ者へ:石川直樹、・インカを歩く:高野潤、・マチュピチュ(天空の聖殿):高野潤、・マヤ・インカ文明の謎:増田義郎、・アンデス・インカをゆく:義井豊、・インカ帝国探検記(ある文化の滅亡の歴史):増田義郎、・インカ帝国(太陽と黄金の民族):カルメン・ベルナン、・ありのまま:真屋順子+高津住男、パパはマイナス50点:小山明子、・筆談ホステス:斉藤里恵、・まともバカ:養老孟司、・俺の考え:本田宗一郎、・こころを動かす言葉:加賀美幸子、・セルフ・コーチング(イチロー選手の言葉に学ぶ):庵里直見、・14歳からの社会学:宮台真司、

 

私は前からノンフィクションやドキュメント関連本が好きでした。今年は9月に娘と甥と南米のペルー旅行に出かけた関係でインカ帝国関連の本が多かったと感じます。また、石川直樹さんの本を2冊読みましたが素晴らしい青年だと感じました。現在は写真家として『山と渓谷』誌などに写真を発表しています。真屋順子さんや小山明子さんの本は介護について考えさせられました。斉藤里恵さんの本は来年1月に北川景子主演でTVドラマ化されます。宮台真司さんの本は中学生用に書かれたものですが大人も読んで考えるべきところが沢山あると思います。

 

対談(2冊)

・虫眼とアニ目:養老孟司*宮崎駿、・差別と日本人:野中広務*辛淑玉、

 

養老孟司さんと宮崎駿さんの対談は面白く読めました。野中広務さんと辛淑玉さんの対談は日本人として深く考えなければならない問題点が沢山ある内容だと思います。一つ目は日本人内の問題として被差別部落出身者への対応です。二つ目は日本人と在日韓国朝鮮人の方たちへの対応です。どちらも差別問題をどうとらえるのかを指摘されている本です。私はこの本を読むまで自民党幹事長を務め寝業師の異名と風貌から野中広務さんを良く思っていませんでしたが、野中広務さんの生い立ちと草の根運動から身を持って受けた差別を廃絶するために一人の人間として戦い続けたことを対談の中から知り、野中広務さんという人に改めて尊敬の念を抱きました。野中広務さんは政界から引退しましたが「人間の平等や尊厳」ということを考えさせる本だと思います。

 

小説(28冊)

・その日の前に:重松清、・おくりびと:百瀬しのぶ、・あなたとどこかへ:吉田修一、・にごりえ:樋口一葉、・父帰る:菊池寛、・マザーグースの歌:北原白秋、・乳房:池波正太郎、・天国で君に逢えたら:飯島夏樹、世話焼き長屋:池波正太郎、・逃亡くそたわけ:絲山秋子、・沖で待つ:絲山秋子、・ニート:絲山秋子、・袋小路の男:絲山秋子、・釣りきち三平の釣れづれの記:矢口高雄、・釣りきち三平の釣れづれの記(青春奮闘編):矢口高雄、・海の仙人:絲山秋子、・イッツ・オンリー・トーク:絲山秋子、・スモールトーク:絲山秋子、・ダーティ・ワーク:絲山秋子、・エスケイプ・アブセント:絲山秋子、・北緯14度:絲山秋子、・山の声:辻まこと、・山からの言葉:辻まこと、・敦煌:井上靖、・絲的メイソウ:絲山秋子、・豚キムチにジンクスはあるのか:絲山秋子、・1Q84(上下):村上春樹、

 

今年大ヒットした村上春樹さんの『1Q84(上下)』も発売後すぐに読みましたが、おやまあ、という感じで物語の中に引き込まれては行きましたが、村上春樹さんが意図したオウム真理教のようなインチキ教団になぜ高学歴の若者が惹きつけられ洗脳され殺人行為にまで走ってしまったのかを解明しようとする小説とは思えませんでした。村上春樹さんは続編を書かれるようですが、人間の精神をテーマにするのが小説ですが、宗教を問題にするのは難しいだろうと思います。なぜならば、精神の安定と解放を意図して生まれた宗教(キリスト教やイスラム教あるいは仏教等)というものが2000年を経過した現代でも何ら心の安定すら保証することなく相変わらず世界各地で戦争は止まず、テロ行為も頻発に発生している現実を見れば、宗教というものが現実に起こる諸事情に如何に無力なのかが一目瞭然となっているからです。

『1Q84(上下)』がヒットしたのは村上さんがイスラエルに行って堂々とシオニズムに対して日本人文学者として初めて意見を述べたことが大きく関連していると思います。村上さんとはどういう人なのか興味を持った人が増え、村上さんの作品を読んでみたいと思ったのだと思います。第2次世界大戦後の世界体制の構築再編過程でイスラエルという国が建国され、同時に発生したパレスチナ難民のことをきちんと考えるべきです。日本の文学者は誰一人として発言しません。文学が人間の生き方を考える契機を与え続けるものであるならば戦後世界の矛盾を考える問題としてイスラエルとパレスチナの問題は避けて通れない問題だと思います。

絲山秋子さんは文学界新人賞を皮切りに芸術選奨文部科学大臣新人賞、川端康成文学賞、芥川賞と数々の文学賞を受賞された方で表現方法がキッパリしていて読んでいてすっきりします。絲山秋子さんの本を10数冊立て続けに読んでみた中では『北緯14度』というものが印象に残りました。アフリカの民族楽器である太鼓演奏者に逢いにいくドキュメンタリーですが、行き当たりばったりの体当たりで進んでいく方法は今TVで大人気の「珍獣ハンター」のイモトアヤコと同じに思えます。

 

                                  2009年12月30日

 

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